デンマークの遊園地が史上最大の投資でつくったのは、「日本」の街だった

1843年開業のコペンハーゲンの遊園地「チボリ」に、数億デンマーククローネを投じた、2000平米超の新エリアが誕生しました。テーマは、なんと「日本」。名前は「Hikari(光)」です。8月15日の正式オープンに先立つプレスツアーに参加し、チボリのCEOやプロジェクトの開発責任者らに話を聞きました。
井上陽子 2026.08.25
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私がデンマークに移り住んだのは、2015年のことです。直前まで住んでいたアメリカのワシントンDCには、少し郊外まで行けば、豊富な種類の納豆や明太子まで揃うスーパーがありました。それがデンマークに来てみると、日本食材は中国や他の東アジア系食材店の一画に並ぶ程度。しかも驚くほど高くて、この先の暮らしに心もとなさを感じたのをよく覚えています。

あれから10年あまりたちましたが、日本人気は、とどまるところを知りません。おにぎりや抹茶味のキットカットがセブンイレブンで買えるようになり、一般のスーパーでも、豆腐や味噌にとどまらず、ポン酢やそうめん、ヤクルトなども見かけるようになりました。MUJIはコペンハーゲン中心部のデパートに入り、文房具や食器などを売っています。外食も、お寿司やラーメンだけでなく、おにぎりやトンカツの店も出てきました。

書店でも、日本の作家の作品をずいぶん見かけるようになりました。6月には、作家の柚木麻子さんが、「バター」のデンマーク語版の刊行に合わせてデンマークを訪れ、イベントは盛況だったようです。

コペンハーゲン中心部にある書店の一角。小川糸『ツバキ文具店』、川口俊和『コーヒーが冷めないうちに』、浅倉卓弥『桜待つ、あの本屋で』など、日本人作家の作品が数多く並ぶ(撮影:井上陽子)

コペンハーゲン中心部にある書店の一角。小川糸『ツバキ文具店』、川口俊和『コーヒーが冷めないうちに』、浅倉卓弥『桜待つ、あの本屋で』など、日本人作家の作品が数多く並ぶ(撮影:井上陽子)

そんな生活実感に限らず、デンマーク人の日本旅行者も、うなぎのぼりです。日刊紙ポリティケンによれば、日本を訪れたデンマーク人は2019年の32,893人から、2025年には50,700人へと急増しており、「日本を訪れるデンマーク人旅行者が爆発的に増えている。でも、なぜ?」 という特集記事を掲載していました。

高まる一方の日本人気を分析するポリティケン紙記事(2026年1月)。円安によって、日本が"憧れの国"から現実的に行ける旅行先となり、行った人の口コミがさらなる人気を呼ぶ、という現象を伝えている

高まる一方の日本人気を分析するポリティケン紙記事(2026年1月)。円安によって、日本が"憧れの国"から現実的に行ける旅行先となり、行った人の口コミがさらなる人気を呼ぶ、という現象を伝えている

日本人気はどこまで行くんだろう、と思っていましたが、今回のチボリの新エリアは、そのピークを象徴する出来事のように見えます。

チボリは1843年開業で、現存する遊園地としては世界で3番目に古い、歴史ある場所です。敷地は8万平米で、コペンハーゲン中央駅の真横にあります。そのうち2000平米超を全面的につくり直したのが「Hikari」なんですよね。投資額は数億デンマーククローネと、チボリいわく「183年の歴史で最大のテーマ開発」です。8月15日、チボリ183回目の誕生日に、和太鼓の演奏とともに正式オープンしました。

私は、それに先立つプレスツアーに参加し、CEOのスサンネ・モアク・コックさんと、5年がかりのプロジェクトを率いたデザイン・開発ディレクターのラスムス・アルテンボーさん、そして、アドバイス役を務めた日本文化の専門家たちと一緒に歩きながら、話を聞かせてもらいました。

今回の記事では、写真たっぷりにHikariエリアをご紹介しつつ、チボリはなぜ、これほど大きな投資をして「日本」エリアをつくったのか、そして、実際に訪れてみた私が感じたことを書いてみたいと思います。

まずは、歩いてみる

新しくオープンしたHikariエリアの入り口(撮影:井上陽子)

新しくオープンしたHikariエリアの入り口(撮影:井上陽子)

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続きは、4280文字あります。
  • なぜ、日本なのか
  • 「respect」と、5人の専門家
  • 「かなり強烈」 同行記者の見方
  • 日本の解像度の高さ

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