かつての自分が欲しかった場所を作ります。そこで、お願いがあります。
井上陽子と申します。読売新聞の記者として長く働いたあと、2015年にデンマークに移住しました。現在、デンマーク人の夫と、小学生2人の子育て中です。
2025年12月、『第3の時間 デンマークで学んだ、短く働き、人生を豊かに変える時間術』(ダイヤモンド社)という本を出版しました。ありがたいことに、出版直後から多くの方に手に取っていただいております。
著者の私が言うのもなんですが、『第3の時間』はヘンな本だったと思います。海外の働き方の紹介というわけでも、北欧本でも、ハウツー本でもないですし、何のカテゴリーに入るのか、我ながらよくわかりません。目次がない時点でゲラを読んでくれた人は、「『この本、どこに行くの?』と思いながら読んでいた」という感想をくれました。
なぜそんな本になったかというと、本の定型とか売れる書き方というものをまるで考えず、かつての自分が読みたかった本を、突き抜けた心境で書く、その一点に集中していたからです。こんな本が本当に出版できたら、それだけでもう、すごい達成だな、と思っていました。それができたら、ここ数年の熱に浮かされたような執筆作業はしばらく忘れて、デンマークで生計を立てていくことを第一に考えよう。そう思っていました。
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ふだんあまりしない、お金の話をするとーー。
デンマークという、生活費がべらぼうに高い国で、日本の方に向けて物を書くという仕事は、はっきり言って、全くもとがとれません。連載も本も、採算を度外視した、いわば”パッションプロジェクト”でした。
結婚を機にデンマークに来た日本人の場合、フルタイムの仕事を探すのが普通です。物価の高い国ですし、共働きじゃないと家計が回らない。だから、私も移住当初は、普通に就職活動をしようと思っていました。一般的に給料のレベルは高いし、何のつてもない国に来てしまったので、どこかに所属していると感じられることは大事だと思ったんです。
でも、仕事探しをしながらも、「それでいいの?」という声が消えなかったんですよね。取材対象としてすごく興味深い素材が、日本の読者もきっと興味を持ちそうなテーマが、目の前にごろごろ転がっているのに、これを書かなくていいの?という。
環境や雇用といった政策にしても、子育てや休暇に関する考え方にしても、部分的に日本と似ている欧州の他国と違って、デンマークは、日本との違いがはっきりしています。アプローチがまるで違うのに、うまく回っているから、インスピレーションになりやすいんですよね。
そういう思いが先にたって、物を書く仕事を続けてきました。いくつかのメディアで連載もさせていただき、その蓄積が今回の書籍につながって、これで一段落だと感じていました。
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ところが、「第3の時間」出版後、想像もしていなかった数の反響をいただきました。しかも数だけでなく、その内容が、本当に心を打つものばかりでした。号泣してしまいました、といった言葉をたくさんいただきました。「これを機に、世の中が変わっていってほしい」という声も、たくさんありました。
なかでも、いちばん多くいただいたのは、「どうやったら、そんな働き方が、そんな生き方ができますか」という疑問でした。
本というのは、出してしまえば終わりです。私にできるのは、こんな世界がある、と見せるところまで。そう思っていました。
ただ、実際には、本を一回読んだだけで変化を起こせる人というのは、ごく一握りかもしれません。「第3の時間」のコンセプトに共鳴してくださりつつも、「どうすれば?」という疑問を持っている読者の方に、何と答えればいいだろう、としばらく考えを巡らせていました。そんな時に知ったのが、このニュースレターでした。
きっかけをくれたのは、読売新聞時代の同期の岩永直子さんです。岩永さんは、勤務先のBuzzFeed Japanで異動を命じられて医療記事が書けなくなった時、退職して独立する道を選びました。医療記事を配信しているニュースレターの登録者数は9,000人を突破し、その一部の方が、有料のサポートメンバーになっています。おかげで医療記事を書き続けられて本当に感謝している、という話でした。
theLetterというプラットフォームは、書き手の執筆活動を、読者に直接支えてもらう仕組みであること。SNSのアルゴリズムに左右されず、記事を届けられること。さらには、イベント機能もあるということで、これだ、と思いました。デンマークの空気感を届けつつ、読者の方の疑問や悩みにも直接答える場として、うってつけでは、と思ったのです。
思い出したのは、多忙を極めた新聞記者時代の自分のことです。当時の私は、とにかく疲れ切っていて、「このままではダメだ」と思っては書店に行き、変化のヒントをくれるような本を探していました。
ただ、本というのは、100%自分の状況に当てはまるものでもないですし、読んだだけで何かしらの変化につなげるには、けっこうな意志の力がいります。だからこそ、本の著者や、自分が望む方向の「少し先」にいる人に、直接話を聞ける場所があったらいいのにな、と私はよく思っていました。
「こんな働き方もあるのか」
「こんな人生もありなのか」
と、ちょっと視界が広がる場所。
かつての私が欲しかったような、そんな場所を、デンマークからつくってみたいと思います。
ニュースレターでやっていくこと
登録していただいた方が無料で読める記事は、今後も配信を続けます。それと同時に、サポートメンバー限定で参加できるイベントの開催や、イベントのレポートも兼ねたコラム記事も配信します。
当面は、月ごとにテーマを変えて、ゲストをお呼びする形を試してみようと思います。テーマとゲストは月のはじめにアナウンスし、イベントは下旬に開催する、という流れです。続けるうちに、最もいい形に調整していこうと思っています。
いま予定しているテーマは、こんなものです。
▶︎デンマークに家族で移住したら、どうなった? (9月24日開催)
▶︎デンマークの若手は、短時間労働でどうやって力をつけるの? (10月開催予定)
▶︎「三遊間のボールを拾わない」働き方、実際、どうやってるの?(11月開催予定)
イベントは一時間で、たっぷりQ&Aの時間を取り、本当に聞きたい人がじっくり聞ける場にしたいと思っています。また、有料ということで参加者が絞られる分、安心して話ができる空間にしたいと思います。大きなイベントではなかなか聞けないようなことも、気軽に聞いていただければと思います。
いずれも、日本時間の夜に、オンラインで開催します。当日ご参加いただけない方も、アーカイブをご覧いただけます。
一般的に伝えられる北欧像は、いい面が強調され、単純に切り取られがちであるように感じてきました。でも、実際の北欧は、そのいい面を担保するための複雑さがあります。デンマークから情報を伝えるうえで私が苦心するのも、この「ニュアンス」の部分でした。イベントでは、プラスもマイナスも含めたリアルなことを伝えていけたら、と思っています。
もちろん、こちらのニュースレターを無料のまま読み続けていただいてもかまいません。先日配信したチボリのような単独の記事も、エッセイのような読み物も、時折配信したいと思っています。

コペンハーゲンから、これからも書き続けたいと思っています。そのために、力を貸していただけたらうれしいです。
サポートメンバーになっていただけませんか
そういうわけで、皆様にお願いです。
私がこれまで連載や著書で書いてきたもの、インタビューなどでお話してきたことが、あなたにとって何かしら意味のあるものだったとしたら。このニュースレターを有料の「サポートメンバー」として支えていただけないでしょうか。
サポート額は、月1,000円を基本として、最低額は800円、それ以上はご自身で自由に決めていただけます。目安になる金額を用意していますが、任意の金額でサポートいただくことも可能です。変更や解約はいつでも可能です。また、金額によって、イベントへの参加やお届けする内容は変わりません。
では、最低額以上に多く出していただいた分は、何になるのかというと…私の自信とやる気になります!この方向性でいけばいいのだと、太鼓判を押していただいた気分で、発信を続けていこうと思います。
読売新聞の記者として、日本社会のいわば「ど真ん中」で17年間を過ごし、アメリカではハーバード大学に行き、ワシントン特派員も経験しました。そんな独特なルートを通ってきた私は、もともと、北欧に惹かれるタイプではありませんでした。こんなに”ゆるい”社会が経済的にもうまくいっていることに、最初は腹立たしさすら感じていたわけですが、だからこそ、いちいち立ち止まり、取材しながら納得していく必要がありました。
私がいま書いていることは、多くの方に取材をし、個人的にも色々と手痛い経験を重ねながら、10年以上をかけて、ようやく分かってきたことばかりです。日本のみなさんが疑問に思うことは、たいてい私自身がつまずいたところでもあります。そういうことを、この場所で一緒に考えていけたらと思っています。
北欧って、行くのにもけっこうなお金がかかりますし、一週間といった短期の滞在でわかることには、どうしても限界があります。デンマーク社会の魅力とは、働く人間として、親として、または一市民として、時間をかけて分かってくる部分が大きいように思います。そのあたりを、私が培ってきたフィルターを通じてお伝えしていければと思っています。
「これを機に、世の中が変わっていってほしい」という声に対して、私にできることがあるとすれば、日本、アメリカ、デンマークと過ごしてきた私の視点、伝える価値があると思う情報を、皆様にお伝えし続けることだろうと思っています。
そのために、力を貸していただけたら、とてもうれしいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
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